製品採用事例|株式会社SUBARU様

3D制御盤 採用事例

3D制御盤の実装第一号機 !

株式会社SUBARU様に3D制御盤を採用いただきました。


次世代生産ラインの開発に向けて日本で初めて3D制御盤を導入
制御盤サイズが従来の3分の2に


日本を代表する自動車メーカーの1社である株式会社SUBARU(スバル)様。水平対向エンジンや運転支援システム「EyeSight(アイサイト)など技術を活かした独自のクルマづくりは世界中で高く評価され、「スバリスト」と言われる熱心なファンがグローバルに広がっています。
そんなスバル様の新たな生産ラインの研究開発にリタールの3D制御盤が採用されました。3D制御盤の採用について、製造本部 群馬製作所 車体生産技術部 車体企画課 ボディ技術企画担当の矢嶋照彦 様にお話をうかがいました。


 

3D制御盤とは?
一般的な制御盤は平らな中板に機器を配置し、それを板金で作った箱に納めて作ります。それに対し3D制御盤は、フレーム構造のエンクロージャー(TS 8連結システム)を使い、システムセクションと呼ばれるレールの上に自由にDINレールを渡せるメリットを活かし、正面・背面・壁面スペースを目一杯使って3次元に機器を配置した新しい形の制御盤です。

3D制御盤の最大のメリットは「制御盤を圧倒的に小型化できること」。通常の制御盤よりも半分以下のサイズまで小型化できます。これにより省スペース化で現場のフットプリントを削減し空間の有効利用ができることに加え、制御盤のサイズはそのままでIoTやAIなど新しい機能のための機器を増やすことができ、制御盤の高機能化・高性能化にも役立ちます。また小型化することで箱に使う鋼材の量も減らすことができ、脱炭素・カーボンニュートラルに貢献します。3D制御盤の場合、規格化された小さな箱の調達で済むので、板金で箱を作るよりも鉄素材の使用量や製造にかかるCO2排出量を削減できます。3D制御盤は、画期的で新しい制御盤のカタチとして注目され始めています。



SUBARUの次の生産ラインに挑戦する専門部署

ーはじめに車体企画課の業務について教えてください
車体企画課は、カーボンニュートラルや省人化など次の時代に向けた新しい生産設備の研究開発を進める部署として2年前に組織化されました。一般的な生産技術部門は量産用の生産ラインの管理をしながら新しい技術開発も行いますが、私たちのチームは研究開発を専任で行い、毎年上期と下期でそれぞれにテーマを決め、新しい取り組みに挑戦しています。ここで開発して効果が認められた技術が量産設備に入っていくというサイクルになっています。

カーボンニュートラルを実現する生産設備を研究

ー現在はどんなテーマに取り組んでいますか?
スバルでは、2050年頃のカーボンニュートラル達成の目標を掲げており、製造部門もそれに向けて取り組んでいます。2022年度下期のテーマは「カーボンニュートラル」とし、エネルギー消費量が少なく、CO2排出量を削減できる生産設備の開発を進めています。
車体製造部門におけるエネルギー消費量の大まかな割合は、溶接が4割、ロボットが3割、エアが1割、その他が1割となっています。このうち溶接とロボットはエネルギー消費量を減らせるメドはついているので、今回は「エア」に焦点を当て、その使用量とエネルギー消費量を減らすべく取り組んでいます。

エアと電動のエネルギー消費量を見える化・徹底比較

ー具体的にはどんな取り組みになりますか?
車体製造では現在、ボディ部品をクランプで固定する際にエアを大量に使用しています。最近はカーボンニュートラルが話題になり、生産設備でも電動化が騒がれていますが、本当に電動の方がエアよりも省エネになっているのか?というのは明らかではなく、現場もカタログ値で判断するしかない状態です。

そこで私たちは、このエアと電動について比較できるテスト用の固定治具を作りました。実際の量産条件でエアーと電動化の消費電力を計測して見える化して比較することで、どちらの方がカーボンニュートラルに有効かを調べようとしています。

さらに、単にエアと電動のエネルギー比較だけでは面白くないので、テスト用固定治具についても新たな技術にチャレンジしています。既存の量産設備の固定治具は製缶・溶接でフレームを作り、そこにクランプなど必要な機器を取り付けていますが、新しいテスト用治具では海外製品のモジュール式のクランプシステムを試しました。フレームとモジュールをボルトで固定してシステムを組み上げることができ、組み立て作業にかかる工数やリードタイム、コスト、メンテナンス性などを比較テストしています。
また制御盤についても、新しい技術として3D制御盤を採用しました。

ーテストの結果はどうでしたか?
システムは完成したばかりで、現在検証中です。それでも色々と発見があり、エアと電動では1本ずつの比較ではほぼ同程度のエネルギー使用量で、モジュール式で構造を作った治具は軽くて省エネにも効果的で、組み立てもボルト締め付けのトルクから強度が測れるなどのメリットはありますが、コストは従来のものの方が安く作れることなどが分かりました。
 

3D制御盤の導入のきっかけ

ーなぜ3D制御盤を採用しようと思ったのですか?
はじめは「制御盤レス」を検討していました。安全柵にIP67の制御機器を取り付けて配線をし、箱で保護せずに剥き出しのままの状態で制御システムを構築できないかと考えました。盤レスならば機器の状態が見やすく、熱対策もいらないのでぜひ試したかったのですが、制御盤1個分のIP67対応のすべての機器を揃えることが難しく、IP67のPLCやブレーカは高額過ぎて採算に合わないことも明白でした。

そこで盤レス以外にも何かできることはないかと思い、インターネットで見つけて興味を持ったのが3D制御盤でした。そこからリタールさんに声をかけて製作しました。今までにない画期的な制御盤だったことと、これを導入するのは日本では私たちが初めてだというのを聞いて、採用を決めました。
 

視線を遮らない背が低く小さな制御盤

ー3D制御盤の印象はいかがでしたか?
まず大きさが3分の2程度になり、小ささに驚きました。
当社では安全柵のなかをいつでも確認できるようにするため、制御盤の高さを低く抑え、高さ1400mmを標準としています。1400mmだと目線を遮ることがなく、安全確認も容易にできるからです。

この3D制御盤は、高さ1400mmの箱で作った時と同じ機器が高さ1200mmの箱に収まっています。しかも内部にはまだ余裕があり、もう1サイズ下の900mmの箱でも収まるのではないかと思うほどです。奥行きは少し増えましたが、ロボットコントローラの制御盤と同程度なのでほとんど気にはなりません。

設計は大変、配線は簡単。レイアウトは考慮する必要あり

ー完成まではスムーズにいきましたか?
機器を3次元で配置する設計に苦労しました。これまで慣れていた2次元での機器配置と感覚が異なるので、3Dの配置設計をやってくれるツールがあればとても便利で良いと思います。また正面と両側面が開いていたため、配線作業はとてもやりやすかったです。

ーそのほかで気になった点はありますか?
後から機器を追加したり、改造する時などが気になりました。両側面の扉は開き防止金具による固定式にしたため、機器の配置によっては正面扉だけだと作業しにくいことがあり、側面を開閉する時にストレスを感じました。横も正面同様のロック式にすると開閉しやすくて良いと思います。

また、両サイドは取り付けた扉が開く分だけスペースを作らなければなりません。小型化して高さは低くできたとしても、置き方に制約ができてしまうのは少し残念です。実際の量産ラインで使う場合にはレイアウトを考慮する必要がありそうです。

3D制御盤は面白い技術 これからじっくりと評価・検証

ー今後について
3D制御盤はとても面白い技術だと思います。価格については、特に調達部門から指摘はありませんでした。また箱の高さについてもバリエーションを増やして、もっと低いタイプがあっても良いと思います。部署内ではある程度検証が進んでいるので、次は量産ラインに入れるために保全部門へ見せて評価してもらうフェーズに入ります。これから1年かけてじっくりと評価していきたいと思っています。

【今回の仕様】 

TS 8連結型システム(品番8615.500)、TSサイドパネル ネジ留め式 鋼板製(品番8115.235)、VXベース コーナーピース トリムパネル付き(品番8640.002)

 

【採用のポイント】
従来のものとは違う制御盤を探していた時に、インターネットで3D制御盤を発見し興味を持ちました。
導入打ち合わせ時に日本初ということを聞いたもの採用した大きな理由です。

3D制御盤